Valuation Matrix
について
このページでは株式投資のための企業分析のステップについて説明します。
はじめに
Valuation Matrixは「市民と会社をつなぐ」をコンセプトに、M&A最前線で活用されている財務分析の知見を世の中に提供します。専門知識のない人でも企業の本質的価値を見抜き、株式投資に役立てられるようにサポートすることを目指しています。
いきなり財務データを読み解くのはとっつきにくいかも知れませんが、大まかな考え方やポイントを掴めばそこまで難しい事ではありません。以下を読んでValuation Matrixの企業分析を使いこなしてみましょう。
因果のマトリクス
まずはじめに、ValuationMatrixの根本にある考え方を説明します。 以下の図は縦軸を原因と結果、横軸を過去と未来として4つの領域に分けた「因果のマトリクス」というものです。
この4つの領域のうち私たちが知りたいのは「将来の結果」ですが、通常与えられているのは「過去の結果」だけです。
「過去の結果」は財務諸表の数値をみればわかり、多くの人はこれをみて「将来の結果」を推察しますがうまくいかないケースが多くあることも事実です。
そこで、ValuationMatrixは、目の前の結果がどのような構造によって生み出されたものかを「分析」し、その構造がどのように変化するかを「洞察」する『デューデリジェンス』のフレームワークを提供します。
さらに洞察された将来の構造から将来の結果を「推計」する『バリュエーション』の方法を提供することで、個々人が企業の本質的価値を見抜き投資ができるようなサポートを行います。
ValutaionMatrixによる企業分析ステップ
Valuation Matrixでは財務情報から始まる以上ステップに分けて企業を分析します。以下ではそれぞれについて説明をしていきます。
Ⅰ 業績を把握する
まずは財務諸表を読み解き、「現在の結果」=「業績」を把握します。財務分析と聞くと抵抗感を覚える方が多いかもしれませんが、以下ポイントとコツを掴み、自分のものにしてみましょう。
①P/L分析
P/Lとはある期間で上げた「成果」、すなわちフローについて記述したものです。これを見ることで企業の「行動」の把握に役立ちます。
P/Lを見るコツ
まず、会社の業績が良いか?悪いか?をみる為に過去の「売上」と「営業利益」の推移を見てみましょう。最低でも3~5年間の変化を確認してみてください。
(例)Valuation MatrixのP/Lグラフ機能
②B/S分析
B/Sとはある時点における「状態」、すなわちストックについて記述したものです。これをみることで企業の「状態」 の把握に役立ちます。
B/Sを見るコツ
コツはずばり「ざっくり大枠を掴むこと」です。細かく見ていくと本質を見失うので以下のように見てみてください。投資のプロは企業の価値を評価する為に、B/Sを以下の4つに分類します。
①運転資本
運転資本とは一言でいえばつなぎ資金のことです。こうしたお金は金利もつかず眠ってしまう為、通常それは「コスト」と認識されます。
②調達資本
調達資本とは企業が事業を行う上で調達した資金のことです。金利は必要以上に高くないか?コストが高い株主資本が多すぎないか?といった観点でみていくとよいでしょう。
③事業用資産
事業用資産とはその名の通り事業運営に使っている資産のことであり、具体的には建物・設備・ソフトウェアなどがあてはまります。事業用資産の変化がある場合は、必ずその理由を確認しましょう。また劣化する可能性があるものがないかについても見ていく必要があります。特に棚卸在庫の価値評価には注意しましょう。
④非事業用資産
非事業用資産とは事業に直接使っていない資産であり、いわば「財産」です。具体的には余剰の現金や有価証券などがあてはまります。この増減に注目することも企業行動を見極める上で重要になります。
(例)Valuation MatrixのB/Sグラフ機能
③C/F分析
財務分析と聞くとまずP/L・B/Sが思い浮かぶ人が多いと思いますが、 投資のプロは財務分析の際にC/Fを重視します。 なぜならP/L・B/Sは会計=「意見」であるのに対し、CF(キャッシュフロー)は「事実」の把握であり、企業が何に投資し実際にいくら稼いだかにより正確に迫ることができるからです。
C/Fを見るコツ
C/Fを見る時の第一のコツは、「長い期間でみる」ということです。キャッシュフローは1・2年では大きく波打つ為、最低で5年、できれば10年の長期間で動きをみなければなりません。
キャッシュフローは、営業CF・投資CF・財務CFの3つに分けて記述されますが、事業の展望をみるためには、営業CFと投資CFの動きを中心にみてみましょう。財務CFはその2つの調整弁と位置付けるとわかりやすいでしょう。
フリーキャッシュフロー(FCF)とは、営業CFと投資CFを足したもので、これがプラスのときに自由に使えるお金が積み上がる事を意味しています。この推移を確認することは稼ぐ力を見る上では非常に重要です。
以下はキャッシュフローマトリクスといって、縦軸に投資CF、横軸に営業CFをとったものです。右上にいくほどFCFが増えることを意味します。このマトリクスは投資期・安定期・停滞期・低迷期・後退期・破綻期に領域が分かれており、どこに位置するかを見ることで、投資段階なのか、回収段階なのかといったいわば企業の健康状態が分かるようになっています。過去の動きや現在の状態を追い、その変化を見ていきましょう。
(例)Valuation Matrixのキャッシュフローマトリクス&C/Fグラフ機能
Ⅱ 稼ぎの仕組みを見抜く
財務諸表で「業績」=「現在の結果」を把握したら、次はそれがどんな構造から産み出されているかを分析します。「現在の原因 」をつかんで、稼ぎの仕組みを見抜きましょう
④バリューチェーン分析
企業の利益の源泉を考える際には、企業活動をプロセス毎に分けて考えるバリューチェーン(ビジネスシステム)の考え方が役に立ちます。M&Aの現場ではDAY1(プロジェクトのスタート時)にはまずこれを描く事から始め、企業の状態を全体的に把握しようとします。
企業のサイクルは、調達したお金をどのような資産に変えるかという「投資活動」、賃金の支払や原料の調達などの「消費活動 」、付加価値に対しての対価を顧客から回収する「回収活動」、その後投資家への「還元活動 」を通じて行われます。ValuationMatrixではこれを分かりやすくする為、ざっくり8つの項目に分けてバリューチェーンとして見ていきます。
バリューチェーンを見るコツ
ポイントは全てを「”額”ではなく”率”」でみて、「異なる企業間の比較」を行うことです。また分析対象が経年でどのような変化があったのかという「時間軸での比較」も有効です。以下では各項目について詳しく説明していきます。
資金調達
”額”→純資産
”率”→財務レバレッジ=総資産÷純資産(自己資本)
財務レバレッジをみれば、企業がどれだけ自己資本にテコをかけ、資本市場から資金を調達する財務戦略力があるかをみることができます。
企画開発
”額”→研究開発費
”率”→研究開発比率=研究開発費÷売上
企業が行う投資は 「広告宣伝」 「採用・教育」「設備投資」 「研究開発」の4つに大きく分かれます。それぞれ成果が上がるまでの時間と、インパクトに違いがあります。研究開発は一般に成果があがるまで3~10年を要する為、開発がどういう段階のものなのか、いつ成果が上がるのかに注目してみましょう。
材料調達
”額”→売上原価
”率”→原価率=売上原価÷売上
原価率を比較することで、他社との収益構造の違いがみえてきます。最終的な利益率と並べて比較することで見えてくるものがないかチェックしてみましょう。
投資
”額”→固定資産新規投資額
”率”→新規投資率=固定資産新規投資額÷固定資産額
設備投資は特にメーカーの場合は将来の売上を占う重要な試金石なります。その投資が稼働するまでの期間や、稼働後のキャパシティについて確認してみましょう。
生産
”額”→固定資産額
”率”→固定資産回転率=売上÷固定資産額
経営状況を見る上で、どれだけ効率的に資本を回転しているか?がわかる回転率の視点は非常に重要です。ここでは投下資本の内、工場・土地・設備といった固定資産(≒事業用資産)がいかにうまくつかわれているかを見てみましょう。
販売
”額(値)”→従業員数
”率”→一人当たり売上=売上÷従業員数
この指標はその企業の「ヒト」がどれだけ売上に貢献しているかを、ざっくりと知ることができます。競合企業を比較して差が大きい場合は販売形態・ビジネス構造に違いがないかを考えてみましょう。
回収
”額”→売掛金
”率”→売上債権回転月=売掛金÷(営業CF÷12)
何ヶ月で売上債権を回収できるかを示す指標となります。ToCビジネスかToBビジネスか等によって回収期間の平均は業界毎に違いはありますが、一般的に2ヶ月を超えると会社の負担が大きくなると言われます。
還元
”額”→配当総額
”率”→配当率=配当総額÷当期純利益
配当率は配当性向とも呼ばれることもあり、 会社が事業によって得た利益をどのくらい株主に還元しているかを表す指標です。日本企業の場合は30~40%が平均といわれています。この率が高い場合は株主に多くの利益を還元していると言えます。 少ない場合はそれが内部留保に回っているのか、研究開発・人材採用などの投資に回っているのかを確認するとよいでしょう。
(例)Valuation Matrixのバリューチェーン分析機能
⑤事業構造分析
Valuation Matrixでは、商品・顧客・契約スキームなど60個の独自項目により
事業構造=「現在の原因」が分析されるようになっています。
⑥ビジネスモデル分析
Valuation Matrixでは、60の項目で評価された事業構造が24個のパターンに分類され、
ビジネスモデルとして一目でわかるようになっています。
(例)Valuation Matrixのビジネスモデル分析一覧
⑦コーポロイド(擬人化)
コーポロイドとは企業を擬人化したキャラクターです。各企業ごとの詳細な特性の違いを武器・防具・若さ・体型・大きさ・背負うもの・レアリティで表現し直感的な企業の把握をサポートするものです。
(例)Valuation Matrixのコーポロイド機能(早見表)
Ⅲ 将来の変化を洞察・推計する
「現在の原因」となる構造を見抜いた後は、それが将来どのように変化し「将来の原因」になるのかを洞察し、「将来の結果」を推計します。
⑧業績予測モデル
会社の『現在の 原因 』をValuation Matrixでは、投資家に役立つ業績予想をするため、「成長」と「安定」という投資家が企業に期待する2つの観点から評価を行います。
⑤で事業構造を分析・評価し、⑥のビジネスモデル分類を行った後、このステップでは独自予想モデルを用いて業績が将来どのように変化するかを推定します。
⑨ロボット予測
Valuation Matrixでは、過去の売上や営業利益を業績予測モデルにあてはめることで
将来2期分の予測値が計算されるようになっています。
(例)Valuation Matrixのロボット予測機能
Ⅳ 企業の価値を評価する
「将来の結果」を推計したらいよいよその企業の価値評価です。価値を数値化することで投資判断に活かしましょう。
⑩DCF(ざっくり企業価値評価)
ざっくり企業価値評価では将来のキャッシュフローからざっくりと事業価値を算出します。「事業価値」と「財産価値」を足したものを「企業価値」といい、これから「負債」を引くことで「株主価値」が分かります。これを時価総額と比較し、低ければ現在の株価は割高、高ければ割安という見方ができます。
Vauation Matrixでは企業のもたらす現金(フリーキャッシュフロー)を、現在価値に割り引くというDCF法を採用して事業価値を出すようにしていますので是非参考にしてみてください。
前提となる売上・営業利益の成長率や割引率などを任意に調整できる自由自在グラフというものもありますので活用していただければと思います。